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Romance夢紀行

Romance夢紀行

Seduced By Moonlight/ローレル・K・ハミルトン

​​最終更新日2020/4/30


※ ※ ※ ネタバレあります ※ ※ ※ 
辞書で確認せず、記憶に頼っててきとーに書きなぐっていますので、内容が間違っていても笑って読み流せる方だけ読んでくださいね

メレディスが近衛兵たちと住む女優メーヴの屋敷の敷地内のプールで、裸同然のきわどい水着だけを身にまとったドールが寛いでいます。パラパラとヘリコプターが近づいてくる音がします。マスコミからの壮絶な取材攻勢をおさえるための妥協案として、彼らの欲しがるような写真を撮らせることで、自分たちのプライバシーを守ることにしました。いまではタブロイドは、シーの王族であるメリーは彼女を妊娠させた相手と結婚すると探り当てていて、いとこのケル王子とメリーにどちらが早く赤ん坊をつくれるかでオンディーアイス女王が王座を競わせていることまで暴いていました。タブロイド紙が知らないのは、ケルがメリーの暗殺を何度も企んでいること、そして罰として6か月間の拷問に服していることでした。メリーは彼が出てくるまでに、なんとしても妊娠しなくてはなりません。

リースがドールとメリーのそばに裸でやってきました。驚くメリーに、きわどい水着は嘘みたいなものだから、とニヤっと笑いかけます。ドールに際どいソングビキニを着るように説得するのにはたっぷり2日間かかったのに。本気でタブロイドが寝室の窓越しにパパラッチするのをやめさせたければ、それなりの餌を与えなくちゃ。リースがメリーの身体にキスを始めると、ドールも積極的に参加を始めます。あなたがマスコミの前に自分を晒すことを選ぶなら、私はあなたのことを見捨てはしない。リースに預けたら、何をしでかすかは神のみぞ知る。ドールに寄りかかるような形でメリーはリラックスチェアに横たわると、リースはメリーの足元にかがみ、足の間にキスを始めました。ヘリコプターが彼らを撮影しているようです。リースはメリーの身体をタオルでくるみ、抱き上げて室内へ連れ戻します。

室内にはフル装備で武装したフロストが待っていました。ドールはゴブリンの王クーラグからの通信が入っていると聞いて別室に向かいました。フロストは、今回のマスコミの対処に不満を持っていて、すねていますが、メリーは彼の気分にフルタイムで対処することに疲れてきました。

メリーはなんとしてでもゴブリンとの同盟期間を延ばしたいと考えています。キットーはゴブリンとシーのハーフで、彼女の魔法で彼をシーとして目覚めさせることができたので、もしもゴブリンのハーフと寝れば、さらに魔力を目覚めさせることができ、結果的にアンシーリーの戦力が高まるとメリーは考えていて、オンディーアイス女王もキットーの魔力を目覚めさせたことは喜んでいるようです。ただアンシーリーの貴族であるフロストとリースは、将来の女王である王族のメリーがゴブリンごときと寝るなんて考えただけでもおぞましく、別の方法を考えるべきだと言っています。ゴブリンに拷問されたリースは彼らに対して強い嫌悪感と拒否感を持っていて乗り越えられていませんが、メリーはリースにこの話し合いに同席して、ゴブリン達の気を散らして欲しいと頼みます。リースは静かに、君が彼らとヤルことができるなら、俺は彼らの王に自分を見せびらかして気をそらしてみせるさと言い、驚くフロストに、もう潮時だ、メリーが言っていることは正しいと伝えます。

あなたを見せびらかしてクーラグをじらしてほしいとメリーは指示します。イライラが募れば交渉の場を去ってしまうのではとリースは言いますが、欲しいと思うものをちらつかされるのはゴブリンにとって拷問のようなもの、欲しいものに手が届かなければ激怒するはず。でももしも自制心を失わせれば、私たちがゲームに勝ったということで、クーラグは私たちのことを尊敬してくれる。彼は次のときに私たちを困らせることを見つけようとするかもしれないけど。ゴブリンはゲームが大好物なの。とメリーは説明します。

フロストが理解できないというと、メリーはいいのよ、私が理解できるように父が教えてくれたからと言います。エスス王子は女王にはケル王子という後継者がいることを知りながら、貴女を後継者としてふさわしい教育を施したのは何故でしょうかとフロストが尋ねます。エスス王子は自身が第2子として生まれたものの、父親に跡継ぎにふさわしい教育を受けたから、自分もそうしたのではないかしらとメリーが言うと、フロストはもしかしたら、でもひょっとすると彼の予言の能力が失われていなかったのかも? と言います。

ドールが呼びに来て、鏡のある部屋に入ると、キットーがゴブリンの王妃に何かを懇願していました。知れば知るほどメリーはこの王妃のことを嫌いになっていますが、顔には出さず、挨拶を交わします。キットーがシーになった証として自分の目の前で光って見せろと要求していたようです。

クーラグが王妃をどかせて鏡に出てきて、キットーがシーになったのが嘘なら同盟はすぐに破棄するし、自分たちの目の前で証明できたら、同盟は約束のままにしておいてやると話します。メリーはハーフのゴブリンにシーの魔法を持たせれば、ひとりにつき同盟を1年延長してほしいと持ち掛けます。リースやドールも肌をみせ、クーラグの気を散らそうとし、王妃はそれに反応して動物的な悲鳴をあげ、クーラグはしまいには腹をかかえて笑い出します。お前は間違いなくエススの娘だ。メリーが、わたしが美しくないから取引に応じてもらえないのですかというと、そんなことをお前にいったのは誰だとクーラグが怒りだします。16歳のときにクーラグがプロポーズしてきたのは、あくまでも肉欲と政治的な申し出だとメリーは考えていましたが、思いがけずこのときはじめて彼が本当に自分のことを愛してくれていたのかもと気づきます。メリーには近衛兵たちがいますが、彼らには禁欲をやめるには相手が私しかいないのです、そして王になるには彼女を妊娠させるしかないのです。本当に自分自身を愛してくれているのかはわかりません。クーラグとは今後も契ることもなく、彼の王妃になることもないだろうけれど、この世でだれかが自分自身を本当に愛してくれると思えるのは、意味があると思え、メリーの目には涙が溢れました。クーラグにはあえてその涙を見せ、彼の気持ちがメリーにとって意味のあることだと伝えます。キットーが背伸びをして、メリーの涙をなめとります。そしてメリーの背後にいたリースが彼ら二人を抱きしめました。

それでもクーラグは一人につきひと月だと言い、メリーはキットーを輝かせることにします。二人を鏡ごしにみていた王妃が興奮して騒ぎ、声をきいてキットーは怯えてしまいます。なんとかなだめようとしますが、さらにシーウンというシーとゴブリンの混血の蜘蛛の怪物としかいえない女が現れたとたん、キットーは悲鳴をあげて震え上がりベッドの下へ隠れてしまい、リースも表には出さないものの大きなショックをうけ、メリーの身体を支えにします。シーウンはキットーを何年もの間、他のゴブリンから守る代わりに様々な形で虐待し、リースの片目をえぐり、拷問したのもシーウンでした。

キットーがシーとなっても、クーラグの民だから帰国させたら、ゴブリンたちの好きにさせるというと、メリーやリースたちがかばいますが、彼の保護者となればゴブリンたちと力づくで権利を争わないといけないようです。不死ではないメリーはゴブリンたちと決闘を続ければ生きてはいられません。リースが、ドールが、キットーのかわりにシーウンと寝ることを交渉します。交渉がエスカレートし、シーウンが鏡ごしに威嚇してくると、怯えきったキットーが両手を彼女のほうへ伸ばし、魔法が発動します。シーウンの身体の一部が鏡の一部からはみ出て固定されてしまいました。キットーだけが鏡のこちらとむこうを結ぶことができますが、彼女を自由にして自分の側に来られる恐怖から、魔法を無効化できないと言います。キットーが発動させた魔法の威力をみて、ゴブリンとシーの混血であるの双子アッシュとホリーは、メリーの元へきて、魔力を持たせてもらうことに同意します。

リースはシーウンに対し、血の償いを求めます。クーラグは、お前を拷問した際に一緒にいたゴブリンを代わりに差し出してもよいと交渉しますが、彼女以上に復讐したい相手はいない、どんな条件も釣り合わないと突っぱね、クーラグは引き下がります。シーウンは半狂乱になり暴れ、哀願しますが、鏡からは動くことが出来ません。キットーに一緒に彼女を斃そうと額をあわせて説得します。フロストからダガーを借りますが、キットーの手元は危うげです。身体を切られてのたうち回るシーウンの腕にリースが攻撃されそうになるのを見て、キットーは駆け寄り、腕を切り裂き、ずたずたにします。返り血で血まみれのリースはしばらくすると壁に寄りかかり、シーウンを切り裂くキットーを見守っていました。初めて魔法を発動させたら、それを血で固めないとならないのです。

キットーが雄たけびをあげ、さらに肉を剣でつき、切り裂き、剣が腰より上に上がらなくなってきました。リースはドールに表情で確認をとり、キットーをだきしめ、耳元で何かささやきます。その後滑らかにシーウンへ近づき、毛皮に指をふれ「死ね」というと、シーウンは死んでいました。ドールとフロストは剣の鞘を掲げ、おかえり、クラムクロウチ、死神よと称えます。リースも帰ってこられて嬉しいよと返します。

ゲイレンがメリーのことを呼びに来ました。映画会社の重役との打ち合わせに出掛けていたメーヴが帰宅したが、部屋で泣いているというのです。夫の看病でいくつか映画の仕事が流れてしまったため、復帰した彼女にセクシー路線の映画で稼いでほしいと考えていたのに、妊娠してしまったため変更を余儀なくされ、表立っては妊娠を祝福しているものの、実際には非難していて、彼女に対して口にはしないものの、中絶してほしいと思っているようです。彼女は癌でひと月ほど前に夫を亡くしていて、彼の赤ん坊をもてる最後の希望なのに、と制作側に強く反発したようです。

メリーが泣いているメーヴに近寄り、大丈夫よ、上手くいくわと慰め、抱きしめると、魔法が広がりました。メーヴも、メリーもまとっていたグラマーがとけ、メリーがみまわすとメーヴの顔が見えませんでしたが丘の上にいて木の下にすわっていました。木から花びらがひらひらと舞ってきています。メリーが寒さを感じると、雪が降り始めていました。

メリーが目を覚ますと、フロストのグレーの目が見つめていて、次に気が付くとゲイレンがそばにいました。しゃべろうとしてもなかなか声が出ず、何があったのとようやくメリーが声を出すと、よくわからないと言われます。メーヴは、一人ぐらい分けてもらってもいいでしょうと思い、ニッカを誘惑したんだけれど、断られ、むしゃくしゃしたのであなたを誘惑したの。思いあがっていたわとメリーに謝ります。
メーヴはメリーの一部は人間だということを忘れ、シーや神を誘惑する魔法をメリーにかけたようですが、思いもかけない反応がかえってきたようです。メーヴにメリーの魔力が反応して、メーヴの愛と春の女神コンケンとしての失われてしまった魔力が戻ってきたそうです。そしてメーヴが誘惑の魔法をかけさせるのをやめようとしたフロストは、失っていない魔力が増大していたようです。

本来であれば、一度失ってしまった神としての能力は二度と戻らないはずで、ましてや不死ではないメリーが誰かに失った神性を取り戻すことができるとは誰も考えていませんでした。メーヴは、メリーが木の下でみた女性はダヌーだと言い、メリーは耳を疑います。ダヌーとは、トゥー・ハ・ダナン、ダナンの娘とも呼ばれる偉大な女神です。

ゲストハウスに戻ってキットーの世話をして、着替えていたはずのドールとリースが、不穏な気配を察してメーヴの寝室に駆けこんできました。ドールが説明を求め、メーヴとゲイレンが説明します。ドールは、おそらくネームレスを斃した時に溢れ出て戻ってきた自然の力が、女神の力の受け皿になる存在としてメリーに向かったのではないかと考察しています。メリーは自身が女神を宿すと聞いて居心地がわるいようですが、メーヴは誇りに思うべきと助言します。ドールが、どのようなときに力が発現するのか、だれに対してなのか確認すべきだと言い、まずニッカがメリーに触れますが、なにも起こりません。メーヴが、シーの感触が恋しくて思わず誘惑の魔法をかけてしまったと言い、メリー自身も同感できたので、メーヴにキスをしてといいます。二人は内側から光り、絶頂をむかえます。屋敷のホールには花まっさかりのリンゴの木が出現していました。口もきけないほど疲れたメリーはドールに抱き上げられ、寝室を連れ出され、いつの間にか彼の腕のなかで眠っていました。

メリーは夢を見ていました。広い平原に立っていて、そばにグレーのマントを羽織り、フードをかぶった女性がいますが、顔を見ようとしても見えません。知らない人のようで、なんとなく若くはない人物という印象を受けます。彼女は黒光りしている古そうなものを手にしていて、もう片方の手で平原をしめすと、そこではドールが地獄の番犬といわれる黒い犬たちに足元をまとわりつかれながら歩いていて、頭を撫でたり、可愛がっていて、微笑んでいます。ガレンもいて、現れた森のなかを子供たちと追いかけっこをして遊んでいます。ニッカも一緒でした。リースは別の方角にいて、右手に戦斧を持ち、死人の軍隊を従えていました。女神が振り向くとそこにはキットーがいて、シーそのものの姿、そしてゴブリンの軍隊を従えていました。彼は右手を振り上げると雷を敵陣へ落とし、軍団は彼の名を祈りのように叫びます。女神がメリーのほうへむくと、持っていたものが木になり、木は枝を伸ばし、巨木となり、幹が裂けます。女神は幹に手を差し込むと、彼女は輝くカップを手にしていました。宝石で飾られた銀の聖杯でした。

夢から目覚めると、リースがそばで眠っています。身体の下に違和感を覚えてみてみると、夢でみた聖杯がありました。

キッチンテーブルにドールが買ってきたシルクの枕カバーに乗せて、みんなで集まりました。キッチンテーブルにはまるで似合わない存在感と大きさです。ゲイレンが紅茶やコーヒー、ココアなどを用意してくれます。みんな無言ですが、ドールがこの品が200年前に現れていてくれたら、何としてでもアイルランドに持っていったのにと窓に向かって話します。200年前のじゃがいも飢饉で亡くなった誰かを悼んでいるようです。メリーからみて、シーは長命のため時の流れの感じ方が違うようで、哀しみや喜びも深く刻まれ、人間よりも長い期間感じているようです。ドールによれば、今までに女神や女神の伴侶に与えられ、現れたことのある魔女の巨釜は3つ。そのうち一つは全ての釜の能力である必要とされる食べ物を与えてくれる、病気を治してくれる、宝物を出してくれるということができ、あとの二つは限定的な能力を持っていたそうです。シーの魔力が弱まり、以前は使えていた釜の能力が使えなくなり、釜も消えてしまったことで、以前は助けられた民が助けられなくなった時の絶望をゲイレンやメリー以外のメンバーは覚えていたようです。

エスス王子はアーサー王伝説による「聖杯」というイメージが広がったことで形がカップに代わってしまったとメリーにこぼしていたようです。

聖遺物の出現を誰に伝えるか、という話題になり、もともとこの品はシーリーコートの品なので、タラニスに伝えれば、アンシーリーが盗んだといって戦争になるだろう、オンディーアイスにはこれだけの大事なことを伝えなければ、発覚したときにはタダではすまないということになります。同席していたセージが、お前たちが女王に報告するかどうかは勝手にしたらいいが、俺はニサーヴェン女王に報告すると言います。メリーが自身で明日、宮廷で女王に報告するまで待ってほしいと言いますが、自分と寝てくれないなら報告しないわけにはいかないと言います。メリーはデミフェイとの同盟は、週1回血を飲ませることで、その条件は果たしているからそれ以上の恵みは与えませんと突っぱねます。交渉の結果、リースとフロストの血で24時間の沈黙を得ることに成功します。フロストは渋りますが、メリーが説得し、ドールが命令して、フロストは従います。

メリーは不死ではない自分が聖杯が選ぶにふさわしい存在なのか信じきれないようです。聖杯が他のだれでもなくメリーのところにやってきたのはなぜなのか、という話題がシーリーコートで追及され、タラニスが不妊のことを知っていて王座を退かなかったことが周囲に分かってしまうと、タラニスは退位だけでなく処刑される可能性もあるため、彼はメリーに対して今まで以上になにをするかわかりません。彼の招待には絶対に裏があるはずだし、普通であれば招待された側は宮廷側の客ということになり、安全が保障されるはずが、そのマナーすら守られない可能性すらあります。ゲイレンは政治的なことはわからないが、と前置きしつつ、シーリーコートを訪問するのはメリーにとって自殺行為だから賛成できない、とドールにたてつきます。権力を求めないゲイレンがメリーの安全のために声をあげた初めての出来事でした。ドールが一番恐れているのは、招待を断ることでマナー違反だとタラニスが激怒してみせ、メリーを正々堂々と決闘の場に引きずり出して殺すこと。リースはメリーの肉と血のハンドパワーは恐ろしい力だけれど、決闘となったらメリーが負けるに決まっていると断言します。

一旦散会することにしますが、セージが約束の血を求めたためリースとメリーは寝室に向かい、フロストとセージは血を吸う際にグラマーを使うかどうか言い争いながら後からついていきます。言い争いは治まらず、リースが打開案として、セージにフロストを一口味見してみたらどうだと提案します。味見したセージはリースと味が変わらない、と文句を言いますが、変わらないなら俺から二人分血を吸えばよいと提案されても、約束は2人のシーの戦士からの血をもらうことだとセージは譲りません。それでもグラマーをつかって血を吸われることに抵抗するフロストにメリーがしびれを切らします。ニッカを代わりに呼んできてと頼みます。ニッカの気持ちを訊ねないのですかとフロストが聞くと、ニッカは私の指示通りのことをやってくれるからとメリーが言います。フロスト、あなたのことは愛している、でもどうしても必要なことをお願いしているのに、どうして協力してくれないの。私は王位を継ぐことになっているの。女王になったらやりたくなくてもやらなくてはならないことが出てくるでしょう。私の王はパートナーとして統治に協力することになるということ。変えようがないことを議論しないということなの。私は自分でないものにはなれません、と言い、昔のような仮面をかぶったフロストを、一度は引きとめますが、彼は指示を果たしに出ていき、ニッカは素直にやってきて、事情を話すとわかりましたと言ってくれ、メリーはほっとします。

セージが3人にグラマーをかけさせてほしいというと、リースが自分に魔法をかけるのは無理だと言い、それなら3人にグラマーをかけることができたら、メリーと交わらせてほしいとセージが要求します。自分のものではないものを取引できないと言い、メリーはグラマーが上手くいくようなら、口でさせてほしいと頼みます。近衛兵たちは、ケルが誰かを妊娠させる前に、なんとかメリーを妊娠させないと彼女は殺されてしまい、自分たちの運命もわからなくなるため、一度の機会も逃せないと考え、どんなにメリーが懇願しても、身体以外には種を出さないのです。メリーは自分が妊娠しなくてはならないことも、自分が父親を失った何者でもなかったときに絆をはぐくんだゲイレンとリース以外は、彼らが義務と命をかけて妊娠させようとしていることもわかっているため、繁殖用のロバになったような気持ちにさせられています。そして誰かが一度彼女を妊娠させたらもう二度と別の近衛兵とは夜を共にできないため、妊娠させる目的以外の想い出を作りたいとも思っているようです。

リースが、メリーが条件を交渉する前にイエスといってしまいましたが、3人はベッドにあがり、セージがメリーの腕に乗りつつ、グラマーをかけ始め、リースの指に噛みつくと、リースの身体が光り始めました。リースが感じていることが不思議とメリーやセージの身体にも反響し、光と快感がどんどん広がります。リースから吸い終わると、リースは光を失って崩れ落ち、セージはむしろ光り輝いていて、さらにニッカへ手を伸ばします。快感が爆発すると、あたりは血まみれになっていて、メリーが考えられるのはセージのこと、目の前にみえる美しい翼のことだけでした。呼吸に集中して、60回ほどを数えると、自分をのぞき込むリースの目に気が付きます。「ドールをよんで」とかろうじて口にすることができました。

リースはニッカの背中をメリーが引き裂いていると思って手首をつかんだようですが、メリーの魔力がベッドの近くにあった聖杯と反応してメリーに女神を宿したようです。翼が2対ベッドに現れていました。セージは身体が大きくなっていて、メリーについた血を吸い、メリーも吸い返します。血は魔力が混ざっているようです。ニッカの背中が裂けて入れ墨状の翼が具現化していましたが、背中は血まみれでした。ニッカはメリーのことを食べたいのか、欲しいのか、内なる強い衝動を抑えるのに苦労しています。ドールがやってきて、シーになったと言うセージに、小さくなれるかやってみろと言います。変化できなくなって、大きく重くなってしまった体では今後空を飛ぶことができないということに気が付いてショックを受けたセージは、もうシーは十分だと言って部屋を出て行ってしまいます。このままだとニッカに宿った強力なパワーが制御できずメリーに怪我をさせてしまう危険もあるため、ドールが今夜は自分が引き受ける、今後メリーが聖杯によって神性を再度与えるか、強大な力を付与する仕組みがはっきりしてくるまでは、メリーには最初に変化したフロストとだけ関係を持ってもらうと言い、ニッカは今回の変化で大人しかった以前と様子が違ってきていますが、何とか自分のなかの衝動と戦い、了承します。

セージはメーヴに強く説得されて、彼女に積極的に慰められていると様子をみていたリースが報告にきていました。メリーは彼がシーになるのも一晩だけのことと考えていましたが、フロストはおそらく彼はずっとそのままだろうと言います。若いメリーは聞かされていませんでしたが、昔、シーはシーではないものをシーに変化させる魔法も持っていたそうです。聖杯にふさわしい存在ではなくなってしまったことで、その魔法や遺物は消えてしまうか、薄まってしまい、喪失感が強すぎて年上のシーたちはあえて語らなくなってしまったそうです。

フロスト、ドールと共に寝室に行き、フロストとクライマックスを迎えようかというところでメリーは誰かの悲鳴が聞こえてくることに気が付きます。最初はフロストかと思いましたが、フロストがメリーから身体を引きはがし警戒態勢をとったので、メリーも四つん這いになり、声の聞こえてくる方向を見ると、ドールが絶叫して、血まみれになり、身もだえています。フロストに彼を助けてと言いますが、何が起こっているのかわかりません、と言い、そばに行こうとするメリーのことも押しとどめます。他の近衛兵たちも武器を持って駆けつけてきましたが、できることがありません。しまいには肉片と血だけが絨毯に広がっていて、メリーはショックで愕然としていましたが、リースが「毛皮が動いた!」と声をあげます。血と肉がうごめきだし、犬へと形作られていきます。お前のその姿を見るのは何百年ぶりだろう、変身はなんて格好いいのだろうと思っていたよ、とリースが言うと、奇妙にくぐもった、でも明らかにドールがこの能力はもうなくなったのだと思っていたと応えます。ドールの中では力がうなっていて、さらに部屋いっぱいの馬、ワシの姿へ変化します。ワシの姿に変化できたのはドール自身も初めてのようで、最後に人間の姿に戻りますが、疲労でぐったりして、身体も起こせないほどです。メリーはリースに指示してベッドに運ばせ、フロストとリース、ドール以外は席を外してほしいと頼みます。

本当はフロスト、あなたと二人きりで話したいけれど、近衛兵と二人きりになることを禁じられているからこのまま話します。あなたのことは愛しているけれど、すねるのは今後一切やめて頂戴。フロストはすねるのは子供のすることで、戦士はすねたりしない、と言い返しますが、ドールとリースも、いやお前はすねていたと言います。メリーは、愛情が誰かよりも少ないと思えばすね、誰かよりも劣っていると感じるとすねる、あなたの機嫌を伺いながら生活することにほとほとつかれてしまった。じゃああなたから離れていますね、とフロストがいうとそうじゃない、と言われます。リースは、メリーはお前に離れてほしいと言っているわけじゃない、むしろメリーはお前のほうを俺より愛しているのだから。でもすねるたびに彼女に冷たくあたり、傲慢なふるまいをすればメリーの気持ちは冷めるぞと忠告します。傲慢なふるまいだとしたら、それは女王から心を守るためだ、とフロストが抗弁すると、メリーが私は女王じゃない。大人になってちょうだい、フロスト。と伝えます。ドールが、もしもお前が少し感情を抑えることができたら、メリーはお前だけを愛するようになり、メリーの愛情を競う必要なんてなくなる、と助言します。フロストは、何百年もの習慣をすぐに帰るのは難しい、自分はすねたりしていないが、何がメリーを不快にさせるのか指摘してもらったら、抑えるよう努力すると言い、メリーも努力してくれるだけでも嬉しいと言います。喜ぶメリーの顔を見て、君のその笑顔を見るためなら軍をも平らげるというフロストに、すねないでいることのほうがずっと簡単なのにと心の中で思うメリーでした。

オンディーアイスが近衛隊長にミストラルを任じたと聞いてメリーは意外に思います。力があるためシーリーコートから追い出されると宮廷に受け入れられましたが、決して彼女のお気に入りのメンバーではありませんでした。いわゆるいじめっ子タイプ。彼はいつも女王のそばにいられない仕事に配属されていて、メリー自身は顔がわかる程度です。

メリーはアンシーリーコートで女王に報告してから、ゴブリンの宮廷に行き、その後シーリーコートへ行く予定です。メーヴのプライベートジェットに乗って向かいます。ドールの弱点は飛行機ですが、乗り込むとすぐにシートベルトを締め、硬く座席を握りしめている様子をみて、完璧な女王の暗殺者にも弱点があるのかと少し身近に思えたのはそれほど昔のことではなかったのにとメリーが思っていると、フロストが何のことを考えているのかわかりますよ、ドールのことですね、とすねた風でもなく口にします。メリーは彼の努力を感じます。

リースが、宮廷に行くなら女王の贈物の指輪をつけないと、女王の好意の証ですからとリングケースを差し出しますが、聖杯と一緒にそばに置いて大丈夫かしらとメリーが不安を口にし、他のものたちもその危険に気付いたようです。

この指輪はむかし、縁結びパワーで知られていたようで、指輪がパワーを発揮するとその場にいる男女二人をたちどころに結び付け、二人は雷に打たれたように恋に落ち、数か月以内に妊娠するそうです。メリーは妊娠したら、その父親と結婚しなくてはなりませんが、いますぐに指輪の能力によって決められてしまうと思うと躊躇します。ドールが飛行機の出迎えに人間の警官たちやマスコミが集まっていて、その視線のなかで思いがけない反応が起こってしまうことは避けたいので、女王が指輪をつけてくるようにという指示があった以上、飛行機内で指輪を試してみるべきですと進言します。

一旦全員に距離をとらせ、一人ずつ試してみたらといったリースが、言い出しっぺの自分が試してもいいかというと、フロストが一番最初に試したいと言い、リースが譲ります。それをみていたゲイレンは無言でしたが、視線からは自分が試したいと強く思っているのが伝わってきます。彼の自制にメリーは気づき、ゲイレンが以前よりもかなり精神的に成熟したと感じていました。

フロストとリースにはメリーと指輪は強く反応し、ほとんどエクスタシーを感じますが、フロストに対しては彼の感触に痛いほどの電気的な刺激を感じるだけだったため、フロストはショックを受けますが、メリーがおそらく聖杯によって二人は神性を取り戻したからではないかと話すと、その説に励まされたようです。

到着すると、ウォルターズ少佐が率いる警察部隊がいて、メリーはなぜ自分がそんなに厳重に警備される対象になったのか、知らない何かが宮廷で進行しているのではないかと不安になります。バリンサスと5人の近衛兵が出迎えてくれます。酔っぱらってアルコール臭いアブロックが挨拶しようとするバリンサスの前に割り込み、ドールとフロストに阻止されます。バリンサスは6人の近衛兵を連れてきていていますが、そのうち3人は女王が選んだそうです。次に挨拶したのはケアオーというハンターの神だった近衛兵で、エスス王子も信用していてメリーに鳥の追跡の仕方などを教えてくれ、彼女が大学で授業に通うようになると、一緒に授業を受けて、遺伝学などにも興味を持っていたようです。王女でなかったら、大学を卒業した彼女に学位を使って何をしたい?と聞いてくれた唯一のシーでもあったようです。次に挨拶したのはアマテオンで、ケルの取り巻きの一人のため、メリーはよい印象を持っていません。ケルの血の正統性を信じ、ゴブリンやシーリーコートのシーの血が混ざった不死ではないメリーが女王になれば宮廷も穢されると信じているようです。以前は長かった髪が肩までに短くなっていて、女王はメリーの指輪に触れて、反応すればメリーの護衛兵になるように、反応しなければ好きにしてよいと命じられたものの、反抗したため、拷問されたようです。素直に命令を受けたらよかったのだと言ったのが、やはりケルの友人でもあるオニルウィンです。最後に猫のように気配を消していたオーシュナが現れます。オーシュナが指輪に手を触れてもよいですかとメリーに許可を求め、メリーは手を差し出します。

オーシュナには指輪が反応し、アブロックにも反応し、次に試したケアオーには反応しませんでした。次にオニルウィンが試すと、刺されたような痛みがお互いに走ります。最後に自分の主義に反するが、女王の命令には従わなくてはならないアマテオンが、あなたに強制はしないけれどお互いやらないとならないと言って近づいていき、アマテオンが触れて、指輪は反応します。オンディーアイス女王が以前送ってきたスパイは死んでしまったので、今度の3人が女王のスパイなのだとメリーは気づきます。指輪が反応しない可能性も考慮して3人。ケアオーはメリーに対して不妊ということが判明したので、女王はメリーのもとには残らせないだろうとメリーは予想しています。

近衛兵たちを左右に整列させ、メリーの記者会見が始まりますが、会場で魔法の気配がして、メリーをフロストとドールがかばいます。メリーはフロストが突撃してきて、床に押し倒されたため、あとから画像をみるまで何が起こったのか見ることはできませんでしたが、銃声が1発聞こえてきました。彼女の近くから血の匂いがしてきます。他の近衛兵たちも彼女をかばい、ウォルターズ少佐の「彼女をここから逃がせ!」とう声が何度も聞こえてきます。警官の一人が誰かに魔法をかけられ発砲したようですが、ドールが直後に射殺したようです。

メリーが起き上がるのを助けようとバリンサスが手を伸ばしてきたので、手を差し出すと、うっかり指輪に触れてしまい、海の魔法が広がりました。バリンサスにマナナーン・マクリールという神性が戻ってきました。一部は人間のメリーには耐えられないほどに魔法が満ちてきたため、バリンサスがもう十分だ!というと現在に意識は戻り、二人のことを近衛兵たちが丸く囲み、二人の生み出した魔法を抑え込んでくれていましたが、早く退避しろ! とウォルターズ少佐に怒鳴られ、抑え込んでいた力が緩むと、一気に周囲に水があふれて周囲の物も人も、メリーとバリンサス以外は水浸しになってしまいました。

用意されていたストレッチリムジンで宮廷へ移動します。宮廷の入口までは、濡れた身体と洋服で、雪の積もった道を歩かないとなりません。メリーはバリンサスに抱かれて移動していますが、彼が温かい海風で身体をシールドしてくれているので温かく過ごしていて、安心感を覚えています。寒さに対応できる能力をもたないゲイレンやニッカはそばにいったら、俺たちもシールドに入れてくれるかと言って寄ってきます。セージは気温の影響をうけないリースにおんぶされています。ドールが、おしゃべりしていないで早く歩けば、早く温かい場所にいられるとみんなをせかします。

バリンサスがメリーのことを王女と読んだのでなぜかと聞くと、距離を持ちたいからだと説明します。自分には強力なパワーがあり、強力な敵がいて、以前はキングメーカーとも言われていました、これからはクイーンメーカーと呼ばれることになるでしょう。もしも自分が前回メリーのことを迎えに行けば、メリーの陣営に強力な力を与える印象をあたえ、敵も排除にかかってくる。だから女王は自分を派遣しませんでした。そして近衛兵と行動を共にしていれば、メリーの伴侶となる人物も自分のことを脅威だと感じるでしょう。女王は指輪に自分が反応したことを知っても、メリーの元に派遣しないだろうし、自分も宮廷で工作を続けると言います。

メリーはバリンサスとの会話をそばに寄って聞こうとするスパイふたりの様子をみて、彼らは恐怖から女王に内容を報告するだろう、自分には恐怖で宮廷を支配する強さはない。でも父は優しすぎて暗殺されてしまった。不死ではない、という弱点がある自分には愛で統治するという選択肢はない。どのように宮廷を統治したらよいのか。無慈悲と公平さは両立するだろうか、と考えています。

妖精の丘の入口に入ると、そこでは裸に武器を身に着けマントをまとったアイヴィとホースローンが待っていました。植物などの神や能力をもった近衛兵たちが送り込まれてきているようです。女王から、指輪に触れて、反応したらすぐにメリーと交わるようにと厳命を受けているようです。ドールが、女王は暗殺未遂のことと、バリンサスの件で報告を受けていないのだろうか、と聞くと、メリーが命令に従って近衛兵と寝て伺候するまでは、誰も通してはならないと命令したため、誰もが機嫌を損ねるのを恐れていて、知らせを聞いていないようです。

この場で更に神性を蘇らせて巨大なエネルギーを生み出してもよいものかどうか、危険が伴うため先に女王に報告したいと言うと、メリーと寝るようにと言われた女王の命令に逆らってシーのプライドである髪の毛をばっさりと切られたホースローンが、これ以上罰を受けたくないのでと渋ります。アイヴィがメリーを軽んじた様子で、早く義務を果たしましょうと言ったため、ゲイレンが俺の屍を越えてみろと立ちふさがり緊張感が高まったため、メリーがやめなさい、と言います。アイヴィ、宮廷の名だたる騎士たちを相手にして無事でいられると思っているの? 彼らは私が命令すれば、あなたを切り刻むわよ。女王の命令は、厳密には面会の前にあなたの種を私の身体に触れさせればよいわけだから、殺すときに出せばよいのではないかしら? というと、アイヴィのバカにした態度が改まり、彼女を恐れた様子が伝わってきます。私は女王の姪だということを二度と忘れないことね。

さらに先に進むと、女王の居室のそばには裸の護衛が二人立っていました。エイドエアーとブリーです。エイドエアーは、ホースローンよりも更に自慢の髪を短くきられていました。ブリーはメリーに微笑みかけ、お迎えにでた二人の近衛兵に指輪が反応しなかったならば、自分たちにも指輪を反応するか試し、反応したら交わるようにと厳命がくだっていますと立ちふさがります。ドールは暗殺未遂があったことを伝え、早く通すようにと言いますが、エイドエアーがあなたは隊長だとしても、女王の命令不服従を理由にこれ以上今日は罰せられたくない、と言ってあくまでも女王の命令を遂行しようとします。ドールとの間に一触即発の魔法のパワーが持ち上がりますが、「ドール下がりなさい」とメリーが3回言ってようやくドールが引き下がります。メリーは進み出ると、エイドエアーのパワーに自分を反応させ、指輪を触れさせると魔法が広がり、二人は立っていられなくなって崩れ落ちそうになると、妖精の丘の気まぐれな力が働き、ドアの前にいたはずが、下の階にあったはずの別の部屋に移動していました。

妖精の丘の中は、むかし泉やリンゴの木、池などがあったそうですが、いまでは枯れた木やくぼみがあるばかりでした。ところがメリーが見た部屋のなかには小ぶりな木があり、ちょぼちょぼと葉もついていました。エイドエアーとメリーの魔法が広がり、メリーの手にエイドエアーの魔法が集まりました。バリンサスは女王が待っている、とせかしますが、メリーはエイドエアーの魔力でやらなければならないことがわかっていました。部屋に古びて欠けた木のお椀がありましたが、それを手に持つと、庭にでて湧き水が枯れた岩のところへ寄っていきます。エイドエアーの男性としての魔力をひび割れた岩に手をあてて椀をあてると、水が湧き出てきました。お椀は素晴らしい品に変化し、メリーに向かって美しく微笑みかける女性が見えます。ゴボゴボと水音が聞こえてきて、泉に水が沸き、水甕にはたっぷりと水が満たされました。

オンディーアイスが現れますが、近衛兵たちはベッドの周りいて、壁でペットの人間がチェーンにつながれているようです。エイモンが「お願いです、これ以上やっては彼が死んでしまいます」と女王に懇願していますが、自分に逆らうのか、と逆上した女王は手にした鞭をふるってエイモンをズタズタにし、ドール、リースたちも女王を止めに入りますが、オンディーアイスは大気と闇の女王だというだけでなく、戦女神でもあるのでした。ドールやリースたちよりも素早く、確実に武器を振るい、傷つけていきます。近衛兵たちは死なないはずですが、過去にないほどに荒れ狂い、メリーをかばっているゲイレンとエイドエアーも近衛兵たちが果たして回復できるのか危惧しているようです。自分より強いドールたちが嬲られているのをみて、メリーはすくんでしまっていますが、ミストラルがメリーのほうをみる眼差しが役立たずの王族が、という侮蔑の眼差しに感じられ、エスス王子に教えられた王族としての義務を思い出します。そしてドールの心臓に柄まで剣を突き刺され、リースの残された瞳にオンディーアイスが剣を突き刺そうとしたとき、メリーの心のなかに恐怖を越えた激怒が噴き出します。

バリンサスがリースをかばいますが、リースは怪我を負い、悲鳴を上げ続けています。メリーのなかの魔力がわきあがり、血の魔力が女王に向かいますが、血が流れ出るくらいでは女王は止まりません。エスス王子に姉に立ち向かうことがあれば、殺す気でやらないと殺されると助言されたことを思い出します。ドールの顔も引き裂かれ、メリーは悲鳴をあげ、魔力を女王へ叩きつけます。女王がメレディスの方を向き、攻撃してくると、ゲイレンが彼女をかばい倒れます。さらにメリーは気づいていませんでしたが、エイドエアーも女王からの攻撃を身体でかばい、倒れました。女王から攻撃されメリーは周りの空気を抜かれ、腹部に痛みに襲われ意識を失います。

目覚めるとあばらが折れているような痛みがあり、身体を起こそうとしても起きられません。メリーはエイドエアーを呼び、キスをすると彼の傷は回復したようでした。身体を支えてくれるようにキットーを呼ぶと、ゲイレンが優しく体の後ろから支えてくれます。さらにドールを呼ぶと、リースを優先してほしいと言います。リースを探すと残った目に剣が突き刺され、顔自体が破損されていて、不死に近いシーの戦士だとしても傷自体が重く、失明すれば、彼の精神を損なうことが見て取れました。ドールは命にかかわらない自分の怪我よりリースを優先してほしいのだということがわかり、メリーはリースを呼び、フロストが彼を運んできますが、メリーが身体を起こそうとするとうめき声が漏れてしまい、その声を自分への嫌悪だと思ったリースが治療を拒むそぶりをみせますが、ゲイレンがメリー自身も怪我を負っていて痛みから出てしまった声だと説明すると、素直にキスを受け癒されます。

オンディーアイス女王は胸に穴のあいたエイモンを膝に抱き、ここにきてエイモンを癒してほしいとメリーに頼みます。エイドエアーがメリーを運ぼうとしますが、メリーを先に治療してもらわないと、そちらに向かうのは無理ですとゲイレンが言うと、オンディーアイスはエイモンを連れてメリーのもとにやってきて、メリーは彼を治療します。

メリーと女王がキスをすると魔法が広がりますが、メリーはこの時、夏の王でした。その魔法は周囲にも広がり、現実に戻ったときには、メリー自身の怪我も、エイモンも、近衛兵たちの怪我も、すっかり治っていました。オンディーアイスは泉に水が満たされ、魔力が戻ってきたことに大いに喜んで、メリーの手を握り、親友のように体を寄せてきます。

オンディーアイスはケルの近衛兵にお茶の時間に差し出されたお茶に魔法がかかっていたようで、自分はおかしくなってしまったと言います。女王を狂気に陥らせて彼女自身に近衛兵を殺させ、守りを薄くするという今回のたくらみの首謀者は抹殺されなくては、メレディスへの暗殺の首謀者も、と宣言します。
そしてメリー自身の近衛兵は彼女をかばうために命を投げ出したが、自分の近衛兵は何もしなかったと言って殺そうとします。ミストラルが我々は裸でベッドの周りにたち、動かないようにと命じられていましたと抗弁しますが、女王はうけいれません。メリーがまず自分と交わった近衛兵は私のものにしてよいとおっしゃいましたね、そしてその近衛兵を罰するのは私だけに権利があるとも約束なさいました、と言い自分の近衛兵をかばいます。そしてもしも叔母様が近衛兵たちを罰するなら、今回の首謀者が意図した女王の守りを薄くするという目的に利してしまうので、そのことは避けた方がよいのではないでしょうかと進言します。

メリーの暗殺に関しては、ケルの近衛兵が実行したとしても、メリーに対する暗殺の試みがあれば、すべてケルに責任を問うという女王の宣言がある以上、近衛兵単独で試みるとは思えない。そして女王はこのまま拷問を続けてはケルが狂ってしまうと考え、彼の近衛兵の一人を彼のもとに遣わしてブロンウィンの涙を控えるようにさせたと告白します。近衛兵に聴取しても、ケルが具体的に指示したという証言は出ないでしょう、おそらく示唆するだけで直接的な指示はなかったはず、ただし女王は暗殺の試みがあっただけでもケルの処罰とすると宣言していたとメリーは女王に指摘します。しかし女王は、彼は私のたった一人の息子なの。子供のいないお前に母親の気持ちがわかるわけがない。自分の子供を殺せとは言わないでしょうと抗弁します。ただし暗殺の首謀者がケルではないと思えるほど女王の狂気は深くはないようで、女王自身も否定しきれなくなり、お茶を出したケルの近衛兵をスールアに探し出させるよう女王が命じます。

王座の間では血を洗い流した女王とエイモンが玉座と王配の席に座り、その少し下には後継者の椅子とその伴侶の席が用意され、そこにはスールアの王ショルトが座っています。メリーの暗殺未遂事件はテレビ中継され、彼女が連れ出されたところまでは流れていましたが、その後メリーたちは女王のところへ直行したため、その後の情報が皆無で、宮廷人たちはメリーが死んだかもしれないと思っていたようです。
女王にカップを運んだケルの近衛兵は首を斬られた状態で発見されました。ドールは魔法の痕跡を匂いで追うことができるため、入口のところに立ち、女王に渡されたカップに残った魔法の痕跡の匂いを持つ人物を密かに探りつつ、女王の不興を買ったという体で歩哨に立っています。返り血を全身に浴びたままのメリーは、ドールをのぞく自分の近衛兵と同盟者のゴブリンの王クーラグとその一党を従え、王座の間へ入っていき、オンディーアイスに挨拶をしたのちに着席します。初めて宮廷人たちが自分に怖れを抱くのを感じます。近衛兵たちは着席したメリーの周りを取り囲みます。

メリーはゴブリンの双子アッシュとホリーを呼び、取引の代償の一部として返り血を与え、満足した彼らはメリーの足元に座り、猫のように手についた血をなめて耽溺しています。さらにゴブリンからはレッドキャップというゴブリン族の中でも一番獰猛で勇猛な何人かがメリーの護衛として選抜されたとしてメリーの足元に進み出ます。レッドキャップの隊長ジョンティは頭から血が流れ出ていますが、これは魔力の証で、戦場で敵の血を浴びることで噴き出るようです。近頃では血が枯れていたようですが、また流れ出しているようです。隊長がメリーの目を見つめていると、メリーの頭から血が流れてきて、それをみたレッドキャップの一人が駆け寄り、メリーの血をなめとります。メリーはさらにニサーヴェン女王も呼び、シーや王族の血をフェイたちに堪能させます。メリーは内心、女王への反逆の犯人は誰なのか、ドールに早く意見を聞きたいと思っていますが、女王は楽しんでいるようです。

これがショーなら、もっとよく見えるところでやってくれと非難する声が貴族から出ると、ドールは身体から武器を外し、部屋の中央へ走り出すと黒い霧となり、巨大なワシになって部屋を飛翔し、黒い霧になると今度は巨大な黒い馬となり、霧になったあと、さらに犬になり、霧になったあと人間の姿に戻り、女王の元へいくと、軽いキスをしながら、何かささやいたようです。その後メリーの元へ来ると、耳元でネリスとささやきます。メリーにとっては意外な名前でした。

ドールが変身した姿を見て、シェイプシフター族の家長であるウルフ卿は興奮気味に、どうやって魔法を取り戻したのだ、と聞かれて、王女のキスによってと答えます。キスだと!? 人間である王女にどうしてそんなことができたのだ!とにわかには信じられない様子です。

元はシーリーコートのシーで、アンシーリーコートで有力貴族にのし上がったミンエーヴァーが、もしも王女が女王となったら、我々は血の誓いを捧げなくてはならず、それは彼女と血の交換をして、彼女の死にゆく運命を一部共にするということ。彼女の即位はシーの没落を意味するため、賛成できませんと主張します。ほかの有力貴族たちも立ち上がって彼女の意見に賛同してみせます。そして魔法が失敗しなければ彼女を始末できていたのにと、自分からメリーの暗殺首謀者だったことを明かします。

自分の指名した王位継承者が不満であれば、私と決闘して自分が女王となるがいい、というと周囲はひるみます。女王はミンエーヴァーを捕らえるようにいいますが、ミンエーヴァーはメリーに対して決闘を申し込みます。ゲイレンが、メリーに対して暗殺を企てて失敗した上に、さらに決闘で彼女に戦わせるというのはフェアではないのではないでしょうかというと女王はその通りだといいますが、その他の貴族たちは今まで王女は出来る限り決闘に持ち込まれないよう気を付けて生きてきたにもかかわらず、何度もケル王子の指示により決闘を仕掛けられてきて、女王はそれを妨げるようなことはなさいませんでした。ご自身でも6歳のときに彼女を溺れさせようとしたではないですかと追及されます。メリーは魔法を蘇らせることができたが、ケルにはできない、と女王は言いますが、彼らはメリーが女王になることによって、シーは死ぬ運命を負い、繁殖できなくなると考えメリーに嫌悪感を抱いているようです。

女王の立ち合いのもと、メリーはミンエーヴァーと決闘することになります。決闘上として聖別された場所で死ぬか、戦闘不能になるまで戦います。ミンエーヴァーは手ごわい相手で、正面から戦ったら死ぬだけとわかっているメリーは、自分に対しての侮りを武器に、相手に致命傷でない程度の傷を負わせることで、開始の掛け声抜きに相手に血の魔法をかける戦略を考えます。もしもメリーが死ねば、フロストはオンディーアイスのところには二度と戻らない、死ぬと言っていたので死ぬことになるでしょう。彼女の近衛兵たちと女王の間には彼女しかいないので、こんなところで死ぬわけにはいきません。

ミンエーヴァーはハンドパワーを二つ持っていて、右手からは雷を放つことができ、左手は獣のような爪を出すことができ、相手をひどく傷つけることができるようです。雷は自分に対して致命的なため、メリーは相手を挑発して、かぎ爪で攻撃させようと考えます。ドールがメリーの唇、手首、首の3か所に傷をつけ血を流させます。ミンエーヴァーの立会人も同じ個所に血を流させ、お互いに歩み寄り、血と血を合わせて血の誓いを行いますがミンエーヴァーが流れる血に強く惹かれていることにメリーは気づきます。メリーはあえて彼女が傷口をわざと握りしめて血を合わせる際に小さな痛みを訴える声を出します。ますます強く握ってきたため、痛いわ、離してとうめきます。それがミンエーヴァーのスイッチを入れ、メリーの手を背中の後ろに回し、かぎ爪を喰い込ませ、メリーは悲鳴を上げ、自分の中の血の魔法が痛みに反応して相手に向かいます。メリーの魔法はミンエーヴァーの身体についた傷を広げ、首と手首は大きく捲れましたが、ミンエーヴァーはまだ死なず、雷を放ってきました。メリーの片腕はもう感覚はありませんでしたが、さらに魔法を放ち、傷を広げます。

オンディーアイスが「メリーが勝者だ、異議のある者はいるか」というと、ネリスが勝者は立っていなければならないはずです、というとメリーは力の入る片手を床につき、なんとか立ち上がります。さらにネリスは決闘上の外に出なければ勝利は確定しないはずと言い、メリーはプライドも何もなく、這いずって聖別された区域からネリスのいるところへ向かい、ネリスの机に手をついて身体を持ち上げるとドールを呼びます。すぐ横にいたドールにネリスがやったことを女王からみんなに発表するように伝えてと命令します。

ネリスの女王への企みが明らかになり、彼女と一族は立ち上がり、抵抗の様子を見せていましたが、メリーはデミフェイたちを呼び、シーの血と肉を与えると許可をあたえます。すると彼らはネリス一族の肉をついばみ始めます。そして血が流れ始めると、血の魔法を呼び出し、彼らの血を流させます。一族のひとりが慈悲を乞いますが、女王とその近衛兵を殺そうとたくらんだのに、なぜ許してもらえると思うのだとオンディーアイスは一蹴します。ネリスはそれを聞いて、自分が責任をとるので、一族のものは助けてほしいと言い、女王は許可します。

メリーは腕の感覚がなく、ドールに助けられ、座らせてもらいますが、オンディーアイスはシーを殺せるモータルレッドを差し出し、それで二人を殺すか、ゴブリンたちに生きたまま弄ばせ、食べさせるか任せると言います。

メリーはドールに支えられながら、ミンエーヴァーのところへ行くと、彼女が再生し始めていることに気付きます。ゴブリンたちに身体をもてあそばれたあとにバラバラにされて生きたまま食料にされるのと、私に殺されるのとどちらがいい?と聞くと、いつでも希望はあると言い、生き残る希望を捨てていません。次にネリスのところへ行き、同じことを訊ねると、殺してほしいと言われます。オンディーアイスにはただ殺せばよいのに。慈悲は統治には不要なもの、それがエスス王子の命を奪ったのだと言われます。そしてメリーが自分の足で立って殺せないなら、二人はゴブリンたちに連れて行かせると言われ、ネリスの懇願の瞳をかんじ、メリーはなんとか地面を踏みしめ、狙いをすませてモータルレッドをネリスの胸に突き刺します。

ミンエーヴァーを振り向くと、ゴブリンたちが再生をはじめたミンエーヴァーの身体にいたずらをして、彼女は悲鳴をあげていて、メリーはゴブリンたちを遠ざけます。ミンエーヴァーはあきらめたかにみえましたが、再度近づいたメリーたちに雷を放ってきます。ジョンティが腕を抑え、腕をひきさきますか、と聞かれ、メリーは縛ってゴブリンたちに連れて行かせて頂戴と指示しますが、オンディーアイスが彼女にはもっと罰が必要だわと言いだしました。

ミンエーヴァー、あなたは愚か者よ。おまえが死なないでいるということは、メリーがもう死にゆくものではないということを証明していることに気が付かないの? 今日私はメレディスが死ぬところを見たけれど、息を吹き返したわ。おまえは無駄なことに全てをかけて失ったのよ。嘘だ!とミンエーヴァーは反発しますが、お前は私を血と暴力で壊そうとしたから、お前を血と暴力で壊してやろう、と宣告します。メレディス、お前は敵に慈悲を与えたが、殺されそうになった。シーは弱さでは統治できない。このことから学ぶのだと女王は言い、メレディスには女王の寝室でフルーアに手当を受けて休むように、彼女の近衛兵たちは付き添うように指示します。

王座の間を出るときにショルトが寄ってきます。スールアは女王を守るためのものだから、今日はなにもできなかった。同盟を交わせば、君のことも守ると言われますが、メリーは怪我がひどく、今夜は難しいとフルーアがいうと引き下がります。ゴブリンのアッシュとホリーも残って女王のお楽しみに参加したいというので好きにさせます。

寝室でフルーアの手当を受け、激痛が我慢できる程度の痛みに抑えられてきます。涙を流すゲイレンに服を脱がされ、横たわると、ドールもメリーを抱きしめてきます。フロストが額にキスをしてきます。他にもっと君を必要としている人がいるから、といって場所を譲ったフロストの様子に子供っぽさやスネた部分は見受けられず、何百歳も年を取ったように、成長したように見えました。

次に目が覚めると、そばに知らない身体があることに気付きます。エイドエアーでした。王女が望めば、おまえは王女のものだと女王に言われました、と言いエイドエアーは怖れと、不安となにか他のもので満たされた目で見つめてきました。メリーは一緒にいて、もちろん。とささやきます。彼はメリーから顔を背けると身体を丸め、メリーと身体が触れた場所が揺れていて、しばらくして彼がむせび泣いていることに気が付きました。リースが、キットーが、ニッカが、セージが彼の身体に手を置き、そばにいることを伝えていました。

エイドエアーのすすり泣きと、身体に回されたドールの腕の緊張でメリーは目が覚めました。オンディーアイスがベッドの横に立っています。お前をうらやんだらいいのか、お前の甘い魔法を味わっている近衛兵たちをうらやんだらいいのかわからない。お前に啓蒙されて、今夜は私もエイモンのほかに何人かの近衛兵をベッドに呼ぶことにしたわ、というと笑って行ってしまいました。

バリンサスやオーシュナ、アブロック、オニルウィン、アマテオンなど寝室に姿が見えない近衛兵たちはどうしているのか、心配になったメリーはリースに探しに行かせます。しばらくするとリースは女王の許可を得て、彼ら全員と、ホースローン、アイヴィ、ブリーも一緒に戻ってきました。巨大なベッドですが、なんとかみんなで休むことにします。

オニルウィンが、女王は我々の運命は彼女の手にあると言っていたというとおしゃべりしていた声がやみますが、メリーは誰の運命も握りたくない、責任が重すぎると言います。それが女王になることではないですか?と聞かれると、民の運命を決めるという意味ではそうかもしれないけれど、個々の判断では運命はあなた自身が握っていると思う、自由意志があるのだから。自由意志を信じる人間による絶対君主制、それはシーのルールに反するんではないだろうか? とオニルウィンが尋ねますが、私のルールを破ることにはならない、とメリーはいいます。リースが、ルールはいいけど家事はクソだと言うと、新しいメンバーはシーは家事をしないものだ、と驚きます。ドールが我々は王女が命じたことをする、さもなければ女王の優しい手の元へ送り返されるだけだと言うと、沈黙が広がりました。メリーはもう十分、明日以降に備えて元気にならなくちゃならない、眠らなくてはと「お休みなさい」と会話をおしまいにします。まわりでリースやほかの近衛兵たちの低い囁きが聞こえてくる中、メリーはドールとエイドエアーの温かい身体にはさまれて休みました。

リースに「君は本当にまだ死にゆくものなのだろうか? 確信はある?」と聞かれます。もう不死かもしれない、でも以前との違いは感じられない。どうやって試したらいいの?

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